著者: David Linthicum

「ゼロタッチ」クラウド運用の長所と短所

特集
16 Jul 20231分
クラウドコンピューティングクラウドマネジメントITマネジメント

真のゼロタッチのクラウド運用が近づいています。または近づいていると言われ続けています。早急に採用する前に、メリットとデメリットをしっかり見極めましょう。

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クレジットShutterstock

ゼロタッチのクラウドオペレーションとは、クラウドオペレーション(CloudOps)のプロセスを自動化し、人の手を加える必要性を最小限に抑えるという概念です。具体的には、パブリックかプライベート問わず、あらゆるクラウドプラットフォームにおけるデプロイメント、設定、スケーリング、モニタリング、問題解決を自動化することであり、これは従来のレガシーシステムやエッジコンピューティングシステムにも及びます。

物理的には、クラウドプロバイダで実行される技術のレイヤ(例:メタクラウド)です。AIOps技術、ID管理、パフォーマンス管理、ガバナンス、FinOpsをはじめ、CloudOpsを自動化できるもの全般を指します。これには、問題を検知し、人の介在なしに解決することも含まれます。 

メタクラウドの採用は、標準的な保守実務(障害復旧にまつわるものを含む)などの緊急性の高い運用プロセスの減少も意味します。DevOpsのツールチェーンも、同じような目的でこの種の技術を使用しています。

他の優れたテクノロジーの動向と同様に、優れた面もあれば考慮すべき面もあります。両面を見ていきましょう。

優れた点

ゼロタッチのCloudOpsには基本的に、次のようなよく知られているメリットがいくつかあります。

  • 効率性のアップ:CloudOpsでルーチンワークを自動化することで、クラウドチームはより戦略的な取り組みに集中する時間とリソースを確保できます。
  • エラーの減少:何かがうまくいかない時は、人間がミスをした場合がほとんどです。ゼロタッチはヒューマンエラーのリスクを軽減します。
  • デプロイメントまでの時間を短縮:デプロイメントの自動化とクラウドサービスの拡張により、着想からデプロイメントまでの期間を短縮できます。
  • 稼働率の向上:AIベースのアルゴリズムを使用して(AIOpsで起こるような問題の)発生前に問題を予測することで、クラウドチームは問題を積極的に解決し、稼働時間を改善できます。
  • 優れたコラボレーションを実現:DevOpsのプラクティスをCloudOpsに統合することで、開発チームと運用チームのコラボレーションが向上し、明らかなメリットをもたらします。

弱点

優れた点について考える場合は、最近ほとんど議論されていない現実を考慮する必要があります。

  • コントロールの欠如:クラウド管理における定型的な作業を自動化することで、CloudOpsチームの環境に対するコントロールレベルが低下します。多くのクラウドアーキテクトが自動化への恐怖に悩まされていますが、彼らの言い分も一理あるのです。
  • CloudOpsスキルの喪失:もし私たちがほとんどの時間CloudOpsを直接管理しないのであれば、人の介入が必要とされるときにどのように修正方法を学ぶのでしょうか?ゼロタッチのCloudOpsは、自己満足に終わる可能性があります。人のスキルが必要な場合が起こっても、何年もCloudOpsの作業に携わっている人がいないため、大惨事が起こってしまう可能性があります。
  • 自動化と人による監視のバランス:多くの企業は、どちらかの極端に偏っています。人が全く関与しないか、完全に関与しているかのどちらかです。現実を見ると、ゼロタッチにはやはり人の監視が必要ですが、ここではバランスを取らなければなりません。
  • テクノロジーへの依存:テクノロジーは効率化やリスク軽減につながりますが、失敗すれば新たなリスクや課題をもたらすという諸刃の剣です。多くのチームは、メリットばかりに目を向けています。ゼロタッチのCloudOpsには、まだ何らかのリスクが存在していたり、あるいは新たなリスクが発生する可能性があります。
  • 価格の高さ:ゼロタッチの実装には、技術だけでなく、それを成功させるための人材や計画も含め、高いコストがかかります。企業が安く済ませようとして、事態を悪化させるのをよく目にします。そこから発生するコスト削減が、ゼロタッチトランスフォーメーションプロジェクトの資金源になるかもしれないと考えているのなら(よく聞く話ですが)、失望することになるでしょう。

時間、リスク、お金をかける価値

ここでは、ゼロタッチのデメリットを中心に説明しました。多くの専門家やテクノロジープロバイダはデメリットに言及しないでしょう。私はすべての事実を提示して、ゼロタッチを考慮する際に役立てていただきたいと思っています。多くの企業にとって、健全なメタクラウド技術レイヤの構築を含むゼロタッチのCloudOpsへの投資は、実に多くの価値をビジネスに還元することになります。

しかし、成功するかどうかは、何を実行するか、どんなソリューションを構築するかというドメインに依存する部分が大きくなります。多くのベンダーが販売促進資料でゼロタッチを謳っていますが、定型のゼロタッチソリューションはまだ存在しません。正しい解決策を導き出すには、計画性、およびコストの高い賢い人材が必要です。必要な投資をするか、または初めから関わらないかの選択は皆様のご自由です。

願わくば、皆さんの期待値を少し下げながらも、皆様がゼロタッチで成功する可能性を高めることができたのであれば幸いです。