DPCオーケストレーションがマルチクラウドのモニタリングデータを集約し、ビジネスプロセスを高速化する方法を提案します。 クレジットThinkstock 企業が直面する最大の技術的課題の一つは、複雑化する環境の管理です。これには複数のクラウドサービスやプロバイダ、オンサイトのデータセンター、エッジシステムやその他のコンポーネントの管理などが含まれます。 クラウド管理データ、エッジシステム、オンプレミスのインフラストラクチャを利用して環境の全体像を把握し、ビジネスワークロードの流れを改善し、コストを削減し、プロセスを合理化するための推奨事項を提示するオーケストレーション ツールが新しいソリューションとして登場しました。 デジタルプラットフォームコンダクター(DPC)は、Gartner社がこれらのツールを表現するために作った言葉です。 [Network Worldニュースレターに登録すると、定期的にインサイトを入手できます。 ] デジタルプラットフォームコンダクターとは 「デジタルプラットフォームコンダクターツールは、アプリケーションやデジタル製品の基盤となる技術やサービスを計画、実装、運用、モニタリングするために使用されるハイブリッドなデジタルインフラストラクチャ管理ツールを調整します」と、Gartnerのリサーチ担当バイスプレジデントであるRoger Williams氏は説明します。 DCPは、インフラストラクチャと運用のリーダーが、「使用する環境やその所有者に関係なく、インフラストラクチャとビジネス価値への貢献度を包括的に把握することを可能にする」とWilliams氏は述べています。「これは、インフラストラクチャからより最適な価値を得るための戦略的意思決定において情報を提供します」 DPCツールは、モニタリング システム、ITサービス管理(ITSM)、クラウド管理、セキュリティ ツールなど多くのソースから情報を収集し、企業インフラの一貫したビューを作成するとWilliams氏は述べています。 「このデータは、企業の目標や制約に関する情報とともに、DPCツールによってワークロードの配置を改善するための有望な領域を特定できます」とWilliams氏は説明します。その後、DPCツールは、「統一された入力のセットを、意図した効果を実現するために必要な他の管理ツールに接続する」ことによって、改善点の実装を支援します。 DPC市場はまだ発展途上であり、多くの企業がこのコンセプトを採用したところだとWilliams氏は述べます。そのため、製品需要の伸びを予測することは困難です。 「多くの管理ツールを持つだけでは、デジタルビジネスのニーズに応えるのに不十分だという認識は増えています」とWilliams氏は語ります。「クラウド移行ではこの問題を解決できないのです」 デジタル技術がDPCへの関心を向上 Gartnerの調査によると、クラウド移行が完了しても、デジタルインフラストラクチャの平均30%がオンプレミスに残ります。「つまり、管理すべき複雑さが減るどころか増えているのです」とWilliams氏は述べます。「ある環境や機能だけに特化した管理ツールは、それだけでは十分ではありません」 デジタル技術に対する需要の高まりが、DPCの需要を促進すると予想されます。Gartnerの「2023年取締役向けサーベイ:不確実性の高い世界におけるビジネス戦略」では、過半数のリーダーが2023年と2024年の戦略的優先事項としてデジタル技術への取り組みを挙げています。 「これらの取り組みは、オンプレミスシステムやクラウドサービス、コロケーション施設などをただ利用するだけではありません」とWilliams氏は説明します。「全員が関与し、全員が協力して、取締役会が求める結果を出さなければならないのです」 Gartnerは、コスト削減、リスク管理、ビジネス調整の改善など、DPCツールの魅力的なユースケースがまず現れると予想しています。「エンドユーザーの関心も高まり、DPCツールを提供するベンダーも増えるでしょう」とWilliams氏は予想します。 DPCベンダーの選び方 DPCツールを使ってインフラストラクチャを管理する能力を向上させようとする組織は、オンプレミス、クラウド、エッジのインフラストラクチャにまたがる包括的なビューを必要とするクラウド移行など、現在のビジネス上の問題を特定してツールを選択すべきだとGartnerは述べています。 DPCツールへの投資を成功させるためにはまた、補完的なIT管理機能が存在すること、またはDPCツールのベンダーから提供されることを条件とする必要があります。 また、契約期間の制限、他のIT管理ツールとのカスタム統合ではなくアプリケーションプログラミングインターフェース(API)の使用、ハイブリッドデジタルインフラ管理の主要なペインポイントに対処できる新機能のモニタリングなど、DPCツールの実装には柔軟性を維持する必要があります。 市場が成熟していないため、企業にとっていくつかの課題があるとGartnerは述べています。一つには、DPCという言葉の新しさゆえに、ベンダーが自社のDPCツールをDPCツールとして分類していないことが多いことです。また、DPCの全機能を取得するためには複数のツールやバンドルを購入する必要があり、その中には望ましくないが避けることのできない機能が含まれている可能性があります。 さらに、ベンダーが販売するDPCツールは、購入者が求める価値を提供するために必要なすべての機能に対応していない場合があります。また、これらの製品を購入しようとする企業は、各ベンダーが提供するDPCツールの機能や重視する分野が異なるため、比較が困難であると感じることもあります。 一部のDPCベンダーとその提供内容 Gartnerによると、何らかの形でDPC製品を提供しているベンダーは10社程度あります。こちらにいくつかの例をご紹介します。 Flexera:Flexera Oneプラットフォームは、SaaSやコンテナを含むオンプレミスやクラウドのサービスにわたって、組織のIT環境内のアセットやリソースを検索、特定、カタログ化します。Flexeraの製品管理担当バイスプレジデントであるSteve Schmidt氏によると、この製品は使用状況とコストのモニタリング、管理、最適化を行います。 たとえばプラットフォームは、ソフトウェアやSaaSライセンスの使用状況の調整と最適化を行い、ワークロードを評価し、IT環境内でのそのワークロードの配置オプションを推奨します。またエンドユーザーは、セルフサービスメカニズムを通じてITリソースを要求することができます。 Flexera Oneは、他のIT管理システムと統合して情報を共有し、さらに充実させます。たとえば、より質の高いアセットデータをITサービス管理構成管理データベースに提供したり、ライセンス データをアプリケーション パフォーマンス管理ツールに提供してワークロード配置をさらに最適化することができるとSchmidt氏は述べています。 Oomnitza:ITのためのビジネスプロセスを自動化するDPCプラットフォームを提供し、150以上のハイブリッドデジタルインフラストラクチャ ツールと統合して、組織の既存のエンドポイント、アプリケーション、セキュリティ、ネットワーク、クラウド インフラシステムを横断するワークフローを調整します。 Oomnitzaの共同設立者であるRamin Ettehad氏は、このプラットフォームはSaaSとして提供され、エージェントレス統合、ローコード ワークフロー、自動化を可能にすると述べ、企業はOomnitzaのDPCを利用して、従業員のオンボーディング、オフボーディング、SaaS管理、リフレッシュ予測、クラウド最適化、監査準備、セキュリティギャップ軽減などのITプロセスを自動化することができると説明します。 Virtana:同社のMulti-Cloud Insight Platformは、組織のハイブリッド インフラストラクチャのトポロジーを、健全性とパフォーマンスの統合ビューとしてリアルタイムに表示します。 「このビューの中で、お客様は高可用性を維持しながら、問題を反応的かつ能動的に診断することができます」と同社の製品責任者であるJon Cyr氏は述べています。Virtanaは、自社のプローブ技術、統合、オープンAPIなど、多くのソースからリアルタイムに収集することでこれを実現します。 このプラットフォームは、人工知能(AI)を用いて、大量のシグナルを意味のある分析情報とアクションに変えることができます。プラットフォームのオープン性により、Virtanaは企業がすでに導入している他のツールとの統合が可能で、「まるごと入れ替える」必要性を回避できるとCyr氏は述べます。 DPCを使用して企業を支援するマネージドサービスプロバイダ DPCのデプロイメントは、企業の事業運営に大きな影響を与える可能性があります。 企業のワークロードのクラウド化を支援し、ITアーキテクチャを設計および実装し、顧客のIT環境管理をサポートするITマネージドサービスプロバイダ(MSP)のPinnacle Technology Partners(PTP)は、OpsRamp社のDPCプラットフォームを使用して、複数環境の管理能力を向上させました。 PTPのマネージドサービス担当バイスプレジデントであるRick Pitcairn氏は、「多くの企業は、アプリケーションのサイロ化、インフラの可視化、運用の成熟といった課題を解決するためにDPCモデルに移行しています」と述べています。「MSPとして、PTPの課題は非常に似ていましたが、多様なインフラストラクチャをお持ちの多くのお客様を抱えていることでその深刻度が倍増していました。」 同社は、運用の観点から顧客環境のモニタリング、管理、保守にレガシーなツールを使用しており、アプリケーションのワークフローやエンドツーエンドのパフォーマンスがほとんど可視化されていませんでした。 「複数のシステムやツールが多くのイベントをオペレーション センターに送り込み、アラートやイベントの乱立を招いていました」とPitcairn氏は振り返ります。「アラートやイベントの相関処理は複数のツールで手作業で行われており、トリアージと修復の負担は大きいものでした。当時は、これらのツールを統合し、データを単一のプラットフォームに引き出す能力が限られていたのです」 具体的な例として、お客様はより多くのワークロードをAmazon Web Services(AWS)クラウドに移行しており、PTPは従来のツールをAWSと統合することができませんでした。「そのため、クラウド運用の面では脆弱な状態でした。クラウドイベントに対応し、クラウドパフォーマンスとコストを最適化し、すべてのクラウド資産と顧客の全体像を把握するための重要なデータを取得できなかったからです」とPitcairn氏は説明します。 PTPは、IT運用管理のためのOpsRampプラットフォームを実装し、同社が顧客のために管理するアプリケーションや重要なサービスの可用性に関するサービスマップなど、IT資産とそのパフォーマンスに関する単一のビューを提供しました。また、イベント管理と相関関係、運用レポート、システムのヘルスチェックにも同プラットフォームを使用しています。しかし、実装には大変な労力を要しました。 「これは大仕事でした。基本的にお客様一人ひとりをもう一度オンボーディングさせる必要があったからです」とPitcairn氏は述べます。「このデプロイメントでは、各クライアントに新しいゲートウェイを設置し、新しいプラットフォームに接続するためのデバイスの再設定やエージェントのインストール、さらにチームのトレーニングも行ったため、かなりの時間がかかりました」 頑張った甲斐はありました。「当社では[オペレーション]管理を1か所で実現できるようになりました。これにより、アラートやノイズが85%以上削減され、根本原因をより早く特定し、サービスマップと相関関係に基づいてインフラストラクチャやアプリケーションの障害を修復できるようになりました」とPitcairn氏は述べます。 また、PTPは、お客様への運用レポートやヘルスチェックの提供にかかる時間を短縮するとともに、トレンドやパフォーマンスのベースラインを特定することで、お客様のITに関する意思決定をサポートできるようになったのです。 「DPCを実装し、クラウドを最適化する当社のセキュリティプラットフォームと統合することで、すべてのお客様やお客様のAWS/Microsoft Azureのリソース使用状況への視野が広がり、セキュリティ態勢のギャップを特定することができるようになりました」とPitcairn氏は説明します。「当社はこの重要なデータを見直し、毎月お客様とお会いして、お客様のコスト最適化とセキュリティのベストプラクティスを実践しています。」 経済状況によりDPCの魅力が向上 ベンダーによると、DPCへの関心は高まっています。「DCPについて話をするお客様は増えていますが、すべてのツールを置き換える単一ツールとして考えているわけではありません」とCyr氏は述べます。「DCPツールは、今すでにあるものに 『プラスアルファ』するものであり、その上に重ねてオーケストレーションし、運用モデルとしてすでに存在するものの多くを活用できる可能性を持っています。多くのお客様は、バラバラになったチームを共通の概念で再度まとめ、より効率的に仕事ができるようになると考えているようです」 Schmidt氏は、「先見性のある経営幹部のほとんどがDPCを包括的にとらえていますが、構成要素を別々に考えている企業も多くあります。技術ベンダー間の利用状況を最も把握している企業は、ITへの無駄遣いが最も少ない企業でもあるため、関心が高まっているのです」と付け加えます。 「テクノロジーの目録と分類はDPCの全ての部分の基礎となり、コスト管理は、戦略的イニシアティブに資金を提供し、より少ないコストでより多くのことを行うための重要な手段です」とSchmidt氏は述べます。「厳しい経済情勢は、さらに需要を押し上げるでしょう。当社はGartnerと同意見です。企業が物事を包括的に理解できるようになれば、さらなる成功につながると考えています。」 市場の成長の鍵となるのはデータのサイロ化ではなく、クラウドからオンプレミスまで、ハイブリッドIT環境全体でのデータの集約だとSchmidt氏は説明します。「データが、ITサービス管理、IT運用管理、セキュリティ、調達、IT財務管理、企業アーキテクチャなど、さまざまなIT管理ソリューションに再利用されることを当社は期待しています」と同氏は続けます。 Oomnitzaでは、ユースケースの数だけでなく、DPCの需要も確実に伸びています。「これは、企業が複雑なITワークフローを合理化し、効率を高め、手作業やチケットの数を減らすのに役立ちます」とEttehad氏は言います。「IT予算がひっ迫し、スキルを有するリソースが少なくなるなか、業界を問わず企業は自動化を受け入れ、IT運用を改善するためにDPCソリューションの実装を検討しています」 現在のマクロ経済状況は、セキュリティ、コンプライアンス、IT財務の効率を向上させるために、従業員のITオフボーディングなどのワークフローを複数のシステムやチーム間で調整および自動化することをITリーダーに強く求めているとEttehad氏は述べています。 「解雇が相次ぐなか、圧倒的な割合の既存顧客や見込み客が当社のDPCソリューションを実装して、[オフボーディング]プロセスをオーケストレーションしています」と同氏は言います。 自動化は、ビジネスのあらゆる側面で効率化を図るための中核的なソリューションと考えられているとEttehads氏は説明します。「企業は、現代のIT部門における自動化を進めるためにDPC技術に期待しています。そのため、経営者や実務担当者がすぐに使えるビジネスプロセル自動化テンプレートをDPCツールが提供することが求められているのです。スキルを有するリソースが少ないなか、DPCツールは、ITチームやビジネスユニットが自動化されたワークフローのデプロイメントを加速し、より早いTime to Valueを得ることができるノーコードまたはローコードのエンジンを提供しなければなりません」 関連コンテンツ オピニオン CIOがAIに光を与える5つの方法 現在の誇大宣伝と主流採用のレベルにもかかわらず、AI世代は生産性のピークへの道を歩み始める前に、幻滅の谷を経験する必要がある。 著者: Nicholas D. 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