Bob Violino
著者: Bob Violino
Contributing writer

データドリブンのプロジェクトを妨げる障害のトップ6

特集
27 Jun 20231分
データ管理IT指導者プロジェクトマネジメント

予算の問題からプロジェクトへの同意に関する課題まで、データに対する取り組みが最初からうまくいかないことは頻繁にあります。ここでは、そのようなハードルを乗り越えて組織を成功に導く方法をご紹介します。

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クレジットThinkstock

データこそがデジタルビジネスの原動力です。企業にとって、高度なアナリティクスを活用してトレンドを発見し、他の方法では得られない決定的な分析情報を得ることが、戦略的にいかに重要になっているかを考えてみてください。

しかしデータドリブンのプロジェクトは、完成はおろか、立ち上げも容易ではありません。実際、企業は情報リソースを活用して競争優位を獲得しようとする際に、いくつかの課題に直面しています。

Foundryが最近実施したデータ&アナリティクス調査では、企業がデータドリブンのプロジェクトの約束を果たすのが難しい理由が検証され、成功の妨げとなるいくつかの主要な要因が明らかになりました。ここではこの調査によって明らかになった、データに対する取り組みの具体化と実現に失敗する上位6つの理由、およびそれを克服するためのITリーダーやデータ専門家からのヒントをご紹介します。

1. データに対する取り組みへの資金不足

特に不透明な経済状況では、どのような技術的な取り組みでも資金調達が困難な場合があります。これはデータに関するプロジェクトでも同様です。これらのプロジェクトは資金を必要とする他の多くの取り組みと競合する可能性があるため、ITリーダーとそのデータチームは、各プロジェクトについて強力なビジネスケースを提示し、過度に複雑にしないことが重要です。

「予算は常に厄介なものですが、これは優先順位と仕事の内容の適正化という問題です」と経営コンサルティング会社のUnify ConsultingのCTO兼技術イネーブルメント担当リードであるCraig Susen氏は述べています。「明らかな成果を求めることは、必ずしもインフラストラクチャ全体の再構築を必要とするわけでは[ありません]」

データドリブンであることは、他のことと同様、カルチャー的な追求であるとSusen氏は言います。「重要業績評価指標を設計または再考し、データをスマートに適時に取得し、共通領域に素早く投入することが必要です」と同氏は説明します。「そして、高度な可視化技術を適用したり、機械学習アルゴリズムと照らし合わせたりして、評価や集計を行うことができます。すべては少しだけ複雑なサイエンスです。そうは言っても、多くの企業は一度に多くのことを行おうとしたり、ビジネスや顧客にとって真の価値をもたらさない領域で過剰なインデックスを作成したりして、このプロセスを複雑にしすぎています」

CIOをはじめとするテクノロジーリーダーたちは、経営幹部、特にCFOと強い協力関係を築く必要があります。  多くの場合、予算の承認を決定するのは財務担当役員です。必要な資金を得る可能性を高めるために、技術責任者はデータドリブンなプロジェクトが収益にとって重要である理由を示さなければなりません。

2.データ戦略の明確さの不足

データドリブンなプロジェクトの指針となる完全なデータ戦略がないのは、「論文の指針となるアウトラインがないのと同じである」と、サステナブルな資材とソリューションを提供するCovantaのデータ&アナリティクス担当シニアディレクターであるCharles Link氏は説明します。

「すべてのプロジェクトは、目的地へ続く道の敷石となるべきものです。データ戦略は、目的地に到達するために情報とテクノロジーをどのように組み合わせるかを明らかにします。貴組織は価値を提供しながら先に進むことができるはずです」

データ戦略を成功させるためには、データ管理の要素(一般的にはITツール、技術、手法)とデータ活用戦略の両方を持つ必要があるとLink氏は述べています。

どのようなデータが利用できるのか、データはどのように定義され、どのくらいの頻度で変化し、どのように使用されているのかが企業内で明確に把握されていないことが往々にしてあると、カスタマーサービスアウトソーシングのグローバル企業であるAloricaのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高情報およびデジタル責任者のMike Clifton氏は説明します。

企業は、データドリブンなプロジェクトを立ち上げる前に、関係者の間で共通言語を作る必要があります。しっかりとした基盤がなければ、予算や資金があまりにも予測できなくなり、明確な範囲と達成可能な結果が見えないために、最初に予算が削られてしまうことが頻繁にあります」と同氏は説明します。

3.データプロジェクトを実装するためのテクノロジーの高コスト

データプロジェクトに十分な資金を確保することはさらに困難であり、データプロジェクトは単に費用のかかる試みとなる可能性があります。データドリブンのプロジェクトは、立ち上げからかなりのリソースと予算を投入する必要があるとClifton氏は述べています。

「これらは一般的に長期的なプロジェクトであり、緊急の優先事項に対処するための迅速な解決策として適用することはできません。意思決定者の多くは、それがどのように機能し、ビジネスに成果をもたらすのかを十分に理解していません。明確な[投資対効果]の実現に向けてデータを効率的に活用するためのデータ収集は複雑な性質を持ち、一つの間違いがコストを指数関数的に押し上げるため、企業にとってしばしば脅威をもたらすのです」

しかし、これらのプロジェクトが適切に行われれば、長期にわたって組織は効率化され、時間とコストが節約できるとClifton氏は説明します。「だからこそ、データを最大限に活用するための明確な戦略を立て、主要な関係者にその計画と実行を理解してもらうことが不可欠なのです」と同氏は述べます。

データドリブンのプロジェクトのサポートに必要なツールへの投資に加え、組織は データサイエンティストのような専門家を雇用し、維持する必要があります。このような需要の高い職種は、一般的に高い報酬を要求します。

4.デジタルトランスフォーメーションへの他の取り組みを優先

あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーションが進んでおり、それに関連するプロジェクトの優先順位が高いことは容易に想像がつきます。だからといって、データドリブンのプロジェクトが後回しにされるべきではありません。

「デジタルトランスフォーメーションの取り組みがデータに対する取り組みよりも優先されているのであれば、再評価する必要があります」とLink氏は述べています。「すべてのデジタルトランスフォーメーションの取り組みにはデータに対する取り組みが含まれていなければなりません。どちらか一方が欠けてもダメなのです」

トランスフォーメーションのデータの要素を無視することは、他の取り組みの失敗を招くことになりかねません。「しっかりとしたデータ戦略なしにデジタルトランスフォーメーションを追求するのは心配です。成功するために必要な結果、イテレーション、ピボットはすべてデータドリブンな意思決定であるべきだからです」と引越および物流会社であるAtlas Van Linesのバイスプレジデント兼CIOのDavid Smith氏は述べています。

「これが組織の障害になっているのであれば、デジタルトランスフォーメーションの取り組みをデータ戦略実行の発端として利用することをおすすめします」

5.データに対する取り組みへの経営陣の同意や支持の欠如

経営幹部がデータドリブンのプロジェクトに理解を示さない場合、十分な資金とリソースを得ることができず成功の可能性は低くなってしまうでしょう。

「トップの賛同が得られないと、データドリブンのプロジェクトは始まる前に終わってしまいます」とビジネス決済サービスを提供するFleetcorのグローバルCIOであるScott duFour氏は述べます。「幸いにもFleetcorではそのような問題はありません。会社の成長と成功のためのビッグデータの重要性を検証するために、事業を運営する経営陣と提携することで、CEOからプロジェクトの理解を得ています」

テクノロジーリーダーは、経営陣の理解を得るためにデータプロジェクトの成果を当初から明確にし、ビジネスの優先事項や痛点に合わせる必要があるとClifton氏は述べています。皮肉なことに、デジタル関連のデプロイメントはすべて、利益を得るためにデータに大きく依存しています。「経営陣が気づいているかどうかにかかわらず、彼らはデータに対する取り組みに資金を提供しているのです」と同氏は説明します。

組織のデータ戦略では、データプロジェクトがビジネス目標をどのようにサポートできるかを経営陣に伝える必要があります。「データに対する取り組みは、実用的なインテリジェンスと自動化を通じてこれらの目的を達成することに焦点を当てるべきです」とLink氏は述べます。

場合によっては、ビジネスリーダー自身がデータプロジェクトに何を求めているのかがよくわからず、価値を理解していないことがサポートの欠如の原因かもしれないとSmith氏は述べています。「価値を見いだせないのであれば、経営陣は支持しません」

運用ダッシュボードや手動タスクの自動化を通して価値を示すために、小さな概念を実証できる機会を利用するのは良いことであるとSmith氏は述べています。「そうすることで経営陣の興味も湧くかもしれません」

6.適切なスキルセットの欠如

技術のスキル不足は、データドリブンなプロジェクトを含むITのほぼすべての領域に影響を及ぼしています。

「十分なIT人材と適切なスキルセットを持つ人材がいなければ、データドリブンのプロジェクトを遂行することは困難です」とduFour氏は述べています。「ITの複数の領域では、IT従業員の不足が現実のものとなっているのです」Fleercorは、技術者を獲得するために柔軟な勤務体系を提供し、従業員のスキル向上に向けてトレーニングを提供しています。

「人材発掘の網の目も広くなりました。4年制大学以上の学位が理想ですが、企業は準学士やIT系資格など、データドリブンのプロジェクト推進に役立つ適切なスキルを持った潜在的な従業員を探す必要があります」とduFour氏は述べています。

データドリブンのプロジェクトの先導と管理に必要な特定の技術経験を持つ人材を採用することは、「この競争の激しい雇用市場では難しいことですが、プロジェクトを成功させるための適切なスキルを確保する上で重要です」とClifton氏は述べています。「適切なスキルや専門知識をすでに持っていなければ、企業はプロジェクトを開始しても、チームが迅速かつ効果的に問題を特定し解決することができないという問題に直面する可能性があります」

データサイエンティスト、データ スチュワード、データ フォレンジック エキスパートが、かつては最も必要とされる最高スキルであったデータアーキテクトに変わって主役になりつつあるとClifton氏は説明します。

「手ごろな報酬の人材が最大の課題となってきました」とLink氏は説明します。「正解は一つではありません。私は、新卒のフレッシュな人材を迎え入れ、時間をかけて指導したにも関わらず、信じられないぐらい高額の給料で引き抜かれたことがあります。私の経験では、社員が迅速に学び、コラボレーションを図るには、同じ場所で仕事をすることに大きな価値があります。私の最新のアプローチは、Workforce Opportunity Servicesのような組織と協力して、優秀な社員で自分のチームを作ることです。そこに至るまでには時間がかかりますが、長期的な成果を重視しています」